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短歌感想etc…

連作について(ネプリ『クルーラー』の感想の前に)

今回は連作の感想を書くにあたって、連作とはどのようなものか、いくつかのサイトを参考にまとめてみました。全て僕の持論であって、今回調べてみたものの結社にも入っていないため短歌全体の認識について知ることはできなかったので、間違い等があった場合は是非指摘していただけると嬉しいです。


目次

①連作とは

②何が評価されるのか

③テーマについて

④組み込む短歌の種類



①連作とは


まず、連作とはどのようなものなのでしょうか。

はじめて連作を作る人について考えてみましょう。何も連作についての知識がない人が連作を作るとき、どのようなことを意識するでしょうか。

僕は、短歌は一瞬のシーンを切り取ったものが多くそのような短歌を集めた結果、はじめはそのシーンを繋げてひとつの物語を作ろうという考えにいたるのではないかと思いました。


しかし、結論を言えば全ての短歌をその物語と関連させる必要はないし、そもそもひとつの物語を作る必要もありません。


今回調べてみて、物語のような流れのある作品と言うよりかはむしろ、公の場に短歌をまとめて出す形式のことを指す傾向があると思いました。


そうはいってもやたらめったら短歌を入れたら言い訳ではなく、当然連作全体の雰囲気を意識しながら作り込む必要があります。(それもがちがちに物語のような筋を作らないようにしながら)。

そしてその「雰囲気」が連作を難しくしているのです。




②何が評価されるのか


上で作品を提出する形式と書いたからには、評価がつきまといます。では具体的にはどのような点が評価されるのでしょうか。


まずは、良い短歌でしょう。いくら全体がいいといってもぱっとしない短歌ばかりでは印象に残りづらいし、その連作を推す理由に欠けます。


次に①でも少し書きましたが、雰囲気も評価されるのではないかと思います。雰囲気は連作の主体の行動、口調、場面の切り取り方(着眼点)などによって決定づけられますが


難しいのはその雰囲気をいかにはっきり書かずに相手に伝えられるか、です。

例えば、連作で流れを作り、その流れに沿って短歌を作るとします。そんな中で「恋」「死にたい」というテーマに直接関係する言葉ばかりが出てきてはどうでしょう?読み取りが容易になってしまい、読み手が深掘りできる部分が少なくなってしまいます。


むしろ「何でこんな行動しているんだろう?」と思わせ続けながら読ませて、一つ一つの短歌で読者を揺さぶった方が連作として、面白いのではないかと思っています。連作の雰囲気という考えのすぐ近くにはそんな広がりもあるのではないでしょうか。




③テーマについて


そんな雰囲気を決めるためにはテーマを設定する必要があります。僕はそれには表テーマと裏テーマの二つのテーマを決めると良いと思いました。


・表テーマ

まずは全体として何について書いてあるかを示す表テーマです。デート、引越し、旅行のような行動を伴うものや恋、愛、季節などの普遍的なものがあげられます。


これが変に奇抜であると読者を混乱させてしまう可能性もあるため、なるべく簡単なものにしてはじめの方から表テーマを明確にしておく必要があるでしょう。


・裏テーマ

次は、上の表テーマと並行しながら進むもう一つの系、裏テーマです。別にこの二つ目のテーマを用意せず、短歌の上手さと洗練された雰囲気で勝負するのもいいと思いますし、実際そのような連作の方が多いと思います。しかし、短歌一首では載せられない深みを何首も読ますことのできる連作では裏テーマをよりはっきりと伝えることができ、より面白くなるのではないかと思いました。


では、どのようなものが裏テーマとなるのでしょうか。例として、忍ぶ恋、漠然とした不安、性自認、思春期の悩み、男性の加害性などの抽象的な概念があげられます。

この裏テーマの真価は、そのまま表テーマにしてしまうと、くどくなってしまう作者の秘めた思いを込められる点だと思っています。




④組み込む短歌の種類


以上のように主に雰囲気、テーマについて書きました。最後に自分なりにこのようなバランスで作ったら良いのではという例を示して終わりにしようと思います。

大切なのは、全ての短歌に評はつかないということです。全て詰め込もうとせず地歌を入れて連作に余裕を持たせつつ、リラックスして編んでいくのが良いと思います。


載せる短歌の割合は例えばこのように地歌を多めにすると良いと思います。


表テーマ(行動が伴う場合の流れ)(30%

裏テーマ(20%

地歌50%


(注意1)この行動が伴う表テーマ、いわゆる物語的にする場合だが、起承転結にこだわらずに作ることを念頭において取り組んでも良いと思う。起承転結の「転」がなくても、その盛り上がりの無さを雰囲気と短歌の良さが補うことで変に凝り固まった流れにならずに済むこともあるだろう。


(注意2)今回、地歌については触れることができなかった。他の方のブログを見ていただきたいと思う。また今思うと、今回の目標には「なんとなく良い歌を集めたもの=連作」という考えを少しでも変えたいというものもあったように思う。


今回読んだ2つの連作には、これらの考えに当てはまる部分もあれば異なる部分もありました。しかし、とても考えさせられる良い連作でした。