夏で待ってる

短歌感想etc…

今までの短歌抜粋

約束の海で探したカノープス まだ方位磁針は南指せない(2017

帰り道君と作った物語 プロットのまま書けないでいる

間違いを認めないまま大人になった私をどうか知らないままで(2018

別れたいと言う君に文句を言いたいのに甘い思い出しか出てこないじゃないか

もう一度閉園前のゲートで待ってて あの夏みたいに抱きしめさせて(2019

(本格的に短歌を始めたのはここから)

玄関の造花が落ちてもかまわずに抱きしめられたら、帰れなくなる

芸術は早い者勝ちだから君『砂丘律』なんて読む暇ないよ(2020.3

祭り後も君を探して街を彷徨ってないものねだりを続けて 夜明け

ねぇ、ママあなたが作った銃でうるさい鳥を落としたよ ママ

そして「君」のない短歌を思いつく服も雑貨も置いてある店(2020.4)(ツイ)   100

未払いを回収できず泣き寝入りなんて、だめね、今から、海に連れてって

網戸を通した庭園〈にわ〉はモザイク画のようだ ビワを掴むあなたも

史学科の彼が選んだユートピア、結局ラピュタになったらしいよ

コメダでは芸術と言ったけどこれは君を一行に閉じ込める作業

幸福感も薬物療法によるものだ まだ思い出すよ、森の入り口(2020.5

話題作のあとがきを開きぼ、と、ぼと、とこぼれるように巨峰を齧る        200

窓にあと少しでとどくツタがある 君に言えなかったことがある

青春の甘酸っぱさを銀のトレーに残したままだ 庭のイチジク

ぎこちなく少女がおどる踊り場で思春期〈はる〉の呪いはとけはじめてる

ひかり出す教会の電光掲示板 誰かを待つ君と目があう(2020.6

レプリカの腕が天窓に伸びていて動けない僕らに影を落とす

舌でイクトゥスを描くと波打って枯れ草もない君の砂丘

あ、もうこれ、縮まないのねと触れる指先の熱さに魅せられている(2021.3)(ツイ開始)

かさ高いポンプを入れる グッピーは群泳というインテリアになる

退屈な、またそれでいて僕らしかいなかったような夏で待ってる

チェルシーの歯につく感じが好きだった姉さんは今シーシャ屋が好き(2021.4

また君の隣で寝たい 岩波のアンカットほどの刺激が欲しい

桜降る 突風でなく濃紺のベンチで俯く少女のために               300

毒親が耽読していた本をそっとコースターにする姉の眼差し

あなたには見せたくもない羽だった いや、翅のような本性だった

声を出すまでが長くて君に見せたかった鳥の影だけ残る(2021.5

構内の美術展広告を撮る はやくあなたのいいねが欲しい

馬鹿みたいって笑っていたね、アブサンを呷って。海に来てまで泣くなよ(2021.6

宗教の正義を思う 祭壇に少女は金貨と子山羊を捧ぐ

首吊りをしようと縄をかけるけどあなたからのチョーカーが痛い

ゲーセンの青 モラトリアム人間のために作られた快楽がある

花瓶の割れる音がして「ねぇ、先生。私のつらさの何がわかるの?」

紫に汚れた筆も置いてこの街を出ようよ さようなら、モネ

(支配とは?)ニュルンベルクのマイスタージンガー(諦めて目を閉じる)(2021.7

東京タワーが予想以上に大きくて ごめん。花火、見れないな、また(2021.8           400

はじめてのクラフト・コーラあなたから奪った夏はこうも鮮やか

YouTubeで旅客機の環境音を聴く 隣のシートの君を感じる

ジェットコースターの音に目を瞑る君は痛みも受け入れている(2021.9

好きという言葉が好きと言う人の好きにふくまれている自己愛

女子だけが褒められている講堂で加害性だけ抱えて 僕ら

君の絵が外された廊下が騒がしい 緻密な桜の切り絵があって

 

砂を吐く。制服を白く汚すのも心地よかった耽美なふたり

ステージのベリー・ダンスをクバ・リブレで流して堪えきれない笑い

前はよく通った家の薄暗く 梯子の掛かったままのベランダ

花の重さにしなる茎のようにして君と手すりにもたれかかった(2021.10

花言葉呟きあって永遠に変わらないことばかり愛した

濡れた黒葡萄のような尖端も君の一部と認めてあげる

パジャントの石膏像にキスをして 冷たさに君が好きだと気づく

鮮やかな天井画 また少しずつグロテスクになっていくふたり           500

抱きしめる 孔雀の羽根の油絵を壁に飾って見惚れる少女を

逃げだしてしまわないよう抱く 君がここは何処って顔をしてもね(2021.11)